インプラント
インプラントとは
歯科用インプラントとは、失われた歯の機能を補うために顎の骨に埋め込む人工の歯根のことを指します。
インプラント本体は外科的処置によって顎の骨に埋入され、その後6〜24週間ほどの治癒期間を経て骨としっかり結合します。この結合によって、天然歯に近い安定性と機能を取り戻すことが可能になります。
たとえば、
「入れ歯がどうしても合わず、ステーキや刺身、サラダなどが食べづらい。もう好きだった食べ物は諦めるしかないのだろうか……」
「カラオケが趣味だけれど、入れ歯やブリッジだと歌いにくいし、発音も気になる」
「笑ったときに入れ歯の金具が見えるのが気になって、思いきり笑えない」
「以前ブリッジを入れたが、歯周病が進行してしまい使えなくなった。もっと良い方法はないのだろうか?」
このようなお悩みを抱える方は少なくありません。
歯を失って初めて、その大切さに気づく方も多いものです。
原則的に抜けた歯を
入れる方法は、以下の3つです。
- ブリッジ
- 入れ歯
- インプラント
ブリッジ
1つ目がブリッジです。
ブリッジ治療は、歯を失った部分の両隣の歯を支えとして連結した被せ物(人工歯)を装着する方法です。
ただし、この治療では健康な隣接歯を削る必要があるため、慎重な判断が求められます。
特に、神経が生きている歯を削る場合は、痛みや炎症のリスクから神経を取る処置が必要になることがあります。神経を失った歯はもろくなりやすく、結果として寿命が短くなる傾向もあります。
たとえば、1本の歯を失った場合、その両側の2本の歯で人工歯を支える設計になります。つまり、3本分の咬合力(噛む力)を2本で負担することになるため、支えとなる歯には大きな負担がかかります。
これが2本欠損している場合は、さらに複数本で支える必要があり、支台歯の負担はより大きくなります。
このような負担は、特に歯周病をお持ちの方にとってはリスクとなり得るため、ブリッジを推奨できないケースも少なくありません。
一方で、接着固定されているため、取り外し式の入れ歯に比べると違和感が少ないという利点もあります。
いずれにしても、ブリッジ治療を長く維持するためには、定期的なメンテナンスと歯周病の予防が欠かせません。
また、咀嚼能力については天然歯の約70%程度とされており、しっかりと咬める状態を維持するには、口腔内全体の健康管理が非常に重要です。
入れ歯
2つ目は、入れ歯です。
入れ歯には、部分入れ歯や総入れ歯などさまざまなタイプがあり、ご自身で取り外すことが可能です。歯ぐきに似せたピンク色の樹脂の上に人工歯が並んでおり、保険適用も可能なため、比較的短期間・低コストで作製できます。また、周囲の歯を削る必要がないという利点もあります。
しかしながら、入れ歯にはいくつかの課題も存在します。
違和感と感覚の低下
入れ歯はお口の中に入れる「大きな異物」となるため、装着時の違和感が避けられません。口腔内は非常に繊細で、わずかな食べ物の粒でも感じ取ることができるため、入れ歯による違和感は強く感じられます。
さらに、食べ物の温度や味も感じにくくなり、食事の楽しさが損なわれることもあります。
支えの歯への負担
部分入れ歯の場合は、両隣の歯に金属のバネ(クラスプ)をかけて固定しますが、このバネにより支えの歯が揺さぶられ、長期的にはダメージを受けてしまいます。
支えの歯が抜けるたびに入れ歯を拡張して、さらに別の歯にバネをかけ…という負の連鎖が起こり、最終的には総入れ歯に至ってしまうケースも少なくありません。
見た目とケアの手間
入れ歯のバネが前歯に近い位置にあると、笑ったときに金具が見えてしまい、見た目が気になる方も多いです。
また、毎日の取り外しと洗浄が必要で、入れ歯にも歯石が付着しますが、これが非常に取りづらく、手間がかかります。
使用中の不快感と咀嚼力の低下
入れ歯が大きくなるにつれてズレたり、粘膜に当たって傷ができたり、食べ物が入り込んで痛みを感じることもあります。
さらに、入れ歯の咀嚼能力は天然歯と比べて大きく劣り、総入れ歯では健康な人のわずか10%程度まで下がるという報告もあります。
その結果、硬い食材や繊維質の多い野菜、肉・魚などを避け、柔らかい炭水化物中心の食生活になりがちで、糖尿病や筋力低下のリスクが高まります。
顎の骨への影響・脳への刺激の欠如
歯を失うと、咬む刺激が伝わらなくなり、顎の骨が次第に痩せていくことが知られています。骨が痩せると入れ歯も合わなくなり、さらなる不快感や不自由が生じます。
また、咬合による刺激は脳への良い刺激となり、記憶力や運動能力の維持にも関係しているとされています。入れ歯では粘膜越しの刺激しか伝わらないため、脳への影響が少なくなり、アルツハイマー型認知症のリスクが高まるという研究報告もあります。
入れ歯は手軽に始められる治療法ですが、長期的な視点では心身への負担も大きくなります。
歯の健康を守ることは、食事や会話だけでなく、心身の健康や人生の豊かさにも直結しています。歯を失って初めてその大切さに気づく方も多くいらっしゃいます。
できるだけご自身の歯を守り、快適な生活を送るためにも、予防と定期的なケアが大切です。
インプラント
そして、3つ目がインプラントです。
インプラントは、ブリッジのように隣の健康な歯を削ったり、支えとして負担をかけたりする必要がありません。また、入れ歯のような装着時の違和感や、咬み合わせのズレ、痛みなどもほとんどなく、快適な使用感が得られます。
とくに前歯の場合は、自然な見た目や表情を取り戻すことができるため、人前でも自信をもって話したり笑ったりできます。金具(クラスプ)などが見えてしまう心配もありません。
歯が抜けたままの放置は危険です
「歯が数本なくても特に困らない」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、それは大きな誤解です。
前歯・犬歯・奥歯(臼歯)それぞれにしっかりとした役割があり、1本でも失うとお口全体にさまざまな影響が出てしまいます。
たとえば、奥歯(大臼歯)を1本失った状態で長く放置すると、本来咬み合っていた反対側の歯が下に伸びてきてしまう「挺出(ていしゅつ)」という現象が起きることがあります。
その結果、後から歯を入れようとしたときに、その挺出した歯を削ってスペースを確保しなければならなくなる場合があります。削ることでしみたり、痛みが出たり、場合によっては神経を取らなければならないこともあります。
また、失った歯の隣の歯が傾いてしまい、歯列が崩れることで矯正が必要になるケースもあります。
奥歯がなくなると、反対側の歯ばかりで咬むようになり、顎関節に負担がかかって不調を引き起こすこともあります。
さらに、こうした咬み合わせの乱れから、肩こりや頭痛、不眠などの全身の不調につながることもあるのです。
たとえ1本の歯であっても、それぞれに大切な役割があり、失うことで思いがけない不調や不便が起こることがあります。
たとえば、もし突然片目が見えなくなったとしたら、きっと多くの方が大きな不安を感じるのではないでしょうか。
「両目で見えていた頃に戻れるなら、どんな方法でも試したい」と考えるのが自然です。
仮にその視力を取り戻すために100万円が必要だったとしても、多くの方が迷わずその価値を見出すのではないでしょうか。
それは、日常を快適に過ごし、自分らしい人生を取り戻すための大切な投資だからです。
歯も同じです。
たった1本の歯を失うことによって、食事の楽しさが半減したり、口元が気になって笑えなくなったり、写真を撮るのが億劫になったりする方も少なくありません。
歯を取り戻すということは、見た目や機能の回復にとどまらず、「自信」や「笑顔」、そして「人生の豊かさ」を取り戻すことにつながります。
友人や家族と同じ食事を美味しく楽しめる、旅行先で自然な笑顔で写真に写れる、人前でも堂々と話せる、そんな日常の一つひとつが、より幸せな人生をつくっていくのです。
基本的な健康を高め、人生の質を向上させる。豊かな気持ちで生きてゆく。このような価値観で考えれば仮に1本の歯を戻すのに40万円かかっても、それが高い金額になるでしょうか?
今後は、ご自身の生活、人生を楽しむため、健康を維持しつづける事が大きな幸せにつながります。
ライフスタイルやライフクオリティーの向上に努める人生が豊かな人生といえるのではないでしょうか?